
前回まで隣地天空率を考察すると題してJCBAのサイト「「天空率の運用の検討」に掲示されている隣地天空率適合建築物の想定法を検証考察した。
結論から法的適合性から考えると「一隣地方式」が最も合理的な手法である事わかる。
今回は、道路天空率の解説に戻りたい。最近道路天空率で質問が多いのが住居系の用途地域で道路幅員が12mを超えた時の区分法。
法56条の3、4項では、下記の様に記される。
3 第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域又は準住居地域内における前面道路の幅員が十二メートル以上である建築物に対する別表第三の規定の適用については、同表(に)欄中「一.二五」とあるのは、「一.二五(前面道路の反対側の境界線からの水平距離が前面道路の幅員に一.二五を乗じて得たもの以上の区域内においては、一.五)」とする
3項の記述は、特定された住居系の用途地域に接道する道路幅員が12mを超える際に通常1.25勾配が前面道路の反対側から道路幅員の1.25倍を超えた距離以上の区域は勾配が1.5に変化する。
たとえば、12m道路の場合は12×1.25=15m
敷地側道路境界から15-12=3mを超えた適用距離までが道路高さ制限勾配が1.5倍となる事を意味する。
第1種住居で容積率300%で適用距離が25mの事例では
図1
図2
敷地内で3mまでが1.25勾配、3mを超えた区域が1.5勾配が適用される。
さらに4項では、3項で後退距離の考慮に関する解説が記述されており
4 前項に規定する建築物で前面道路の境界線から後退したものに対する同項の規定の適用については、同項中「前面道路の反対側の境界線」とあるのは「前面道路の反対側の境界線から当該境界線から当該建築物の後退距離(*)に相当する距離だけ外側の線」と、「前面道路の幅員に」とあるのは「、前面道路の幅員に、当該建築物の後退距離に二を乗じて得たものを加えたものに」とすることができる。
後退距離があればその分外側を起点とし、前面道路の幅員に後退距離の2倍を加算したものを3項の道路の幅員とする。
上記事例では、道路幅員が12m、後退距離が1mゆえ
12+1×2=14m 14m×1.25=17.5m 17.5m-(12+1)m=4.5m
敷地がらの道路境界から4.5mの位置から勾配が1.5倍にする事が可能になる。とあるただしこの場合できる規定ゆえ3項同様に後退距離は考慮しない選択も可能だ。
図3
これが基準法56条における3,4項の特定の住居系においては勾配区分が変わる事を意味する。
勾配の区分が変わるという事は、天空率計算においては、
第一三五条の六
2 当該建築物の敷地が、道路高さ制限による高さの限度として水平距離に乗ずべき数値が異なる地域、地区又は区域(以下この章において「道路制限勾配が異なる地域等」という。)にわたる場合における前項第一号の規定の適用については、同号中「限る。)」とあるのは「限る。)の道路制限勾配が異なる地域等ごとの部分」と、「という。)の」とあるのは「という。)の道路制限勾配が異なる地域等ごとの部分の」とする。
隣地天空率も同様だが高さ制限の勾配が異なる場合には、制限勾配が異なる地域等ごとの部分に区分されなければならない。
1種住居地域内でも道路幅員が12mを超えた場合1.25勾配の区域と1.5勾配の区域に区分しなければならない。
上図例で後退距離を考慮しない場合と加算さた場合で検証してみたい。
後退距離を考慮しない場合1.25勾配の区域は
図4
NG算定位置が3、P10近接点の差分が-0.338%。
アイソメ図は
図5
1.5勾配の区域は
図6
全ポイントクリアーしている。近接算定位置で1.043%の差分。
アイソメ図で確認すると
図7
次に後退距離1mを適用した場合は
図8
NG箇所は1に減少
1.25勾配の区域は
図9
やはりP10が4NGで差分-0.023%
アイソメ図では
図10
次に1.5勾配の区域は
図11
近接点の差分が2.097%。アイソメ図は
図12
となる。
この事例では、後退距離を採用した方が設計有利に機能した様だ。
しかし後退距離を0mに設定した場合、1.25区域が消滅する為、後退距離0mが有利になるのでは?と思いトライしてみる事とした。
図13
敷地条件および用途地域は1種住居で容積率300%で適用距離は25m。階高が40mになり南北方向に幅が広くなった場合で後退距離は前例の1mから3.5mに広くなった。
図14
道路高さ制限を大きく超えており天空率解析を行う。
今度は後退距離3.5mを採用した場合から始めたい。
まずは1.25勾配区域から
図15
(12+3.5×2)×1.25=23.75mまでが勾配1.25勾配の区域
NG箇所が2。最大差分が-0.324%
1.5勾配の区域は
図16
23.75mを超えた1.5勾配の区域はクリアーとなった。
では次に後退距離を採用しない0m後退距離で比較した事例
1.25勾配区分の区域は、12×1.25=15m 15-12=3m 1.25勾配の区域は後退距離内に存在する事になり計画建築物無で
天空率100%0で比較無し。
1.5勾配の区域のみ比較だが
図17
1.5勾配の区域ゆえこの場合もクリアーすると思ったが適合建築物の高さが低くなり天空率がアップしNGとなった。最大差分も-0.729%でNG差分も大きくなった。
やはり一般的に後退距離は最大を採用した方が有利に機能しそうだ。
さて次に2方向道路で12mを超える敷地形状
で132条と複合された場合の区分法を検証してみたいが今回も長くなった。3連休だ次回にしよう。次回までお元気で! hi