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凹型隣地天空率の算定位置考察

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1月13日土曜日

昨日に続き東京は、最低気温マイナス2度、最高気温も7度どまりの予報。

公園の池も朝のうちは氷が薄く張っていた。その下で鯉が2匹じっとして動かない。「サブイネ~」とでも語っているような・・。

 

 今週の比嘉ブログ天空率講座もユーザーからの問いあわせの回答を行う。

 「一の隣地方式」の適法性を解説してほしいとのリクエストにお答えする為、前段は早めに終了し解説に入りたい。解説部は確認申請時のたたきの資料としてご利用いただければ幸いだ。

 

 今週の講習風景から始めよう

今週は火曜日からの始まり

 画地割の講座で2名。その他、実践の面積計測法なども解説。ひと仕事おえた安堵のお顔。

 

 木曜日は、ベテランバリバリの企画設計者が一名。3回講習シリーズの1回目は天空率講座。

 

 さすがにかつてのTP-PLANNERユーザーでもあり最新の情報をお伝えしながら実際の事案の天空率を解析しながらの解説するだけ。確認する事がすべて実践的な質問で楽しい時間でした。次回は逆日影、日影の検証?。来週もお待ちしてます。

 

 

 さてサポートセンターに寄せられた質問の中から下図の事例。

円弧で示す部分の隣地天空率に関して検証してみたい。

 

 

 まずはその凹部からの隣地高さ制限を確認してみると商業地域に45mの高さの計画建築物の設定ゆえ

当然NGとなる。そこで天空率計算となる。

 隣地天空率の解析法としてJCBAでは「一の隣地方式」と「敷地区分方式」がある事を日本建築行政会議のサイト

http://www.jcba-net.jp/news/tenkuritu20100420.pdf

で市街地部会平成 20 年度報告書に掲載された内容がアップされている。「適用事例集」と市街地部会報告書の両方が審査時のバイブルとして利用される。

 それらを比較した結果は「一の隣地方式」で算定位置を1つにまとめると、もっとも安全側となる。 と記述され「一隣地方式」の有効性が記述されている。今回もこの事の検証となる。

 

 天空率の基本的な考え方は国交省住宅局建築指導課等監修の「改正建築基準法の解説」

 天空率計算を行う事の意義が明確に解説されている。

 

 

 

 通風採光を確保する手段として「H/D比の増減による延長方向の増減の度合いよりむしろ建築物周辺の空地による空地の増減の度合いの方が大きく・・」H/D比とは従来の高さ制限の事。

 
 つまり高さ制限ではNGでもNG分に見合う敷地内空地があれば通風採光はもとより開放度も確保できる事を意図する。

 

 この事から敷地境界点間で区分される「敷地区分方式」では敷地内の空地を正しくしく評価しているとはいえない。

 

 たとえば今回の例題を敷地区分方式で解析してみると

 

赤表示のNGとなるがその算定位置から近接するA部分の空地からの通風採光効果は無視され、B部分の建築物の規模も結果に反映されない。

 

 A,B いずれも隣地の通風採光に影響がある事は明白だ。

 

 この場合、クリアーする為には、建物の中間部に空地を設定するほか、従来の高さ制限同様に建物高を低くしなければならず空地から通風採光を確保する天空率利用の目的と合致しない

 

 従来の隣地斜線の法文を確認すると

 

 隣地高さ制限は

第56条 建築物の各部分の高さは、次に掲げるもの以下としなければならない。
2.当該部分から
隣地境界線までの水平距離に、次に掲げる区分に従い、イ若しくはニに定める数値が1.25とされている建築物で高さが20メートルを超える部分を有するもの又はイからニまでに定める数値が2.5とされている建築物(・・)で高さが31メートルを超える部分を有するものにあつては、それぞれその部分から隣地境界線までの水平距離のうち最小のものに相当する距離を加えたものに、イからニまでに定める数値を乗じて得たものに、イ又はニに定める数値が1.25とされている建築物にあつては20メートルを、イからニまでに定める数値が2.5とされている建築物にあつては31メートルを加えたもの


 建築物の各部分高さは、当該建築物の隣地境界線からの水平距離とあり、隣地境界線は特定の敷地境界点間を意図していない。隣地斜線は全ての隣地境界線からの寄棟状に高さ制限が設定される。

「一の隣地方式」では

 

このようにすべての隣地境界線からの勾配で寄棟状に作成されている事がわかる。

 

 

 次に算定基準線の設定法を考察してみたい法56条7項2号を確認すると

 

7 次の各号のいずれかに掲げる規定によりその高さが制限された場合にそれぞれ当該各号に定める位置において確保される採光、通風等と同程度以上の採光、通風等が当該位置において確保されるものとして政令で定める基準に適合する建築物については、それぞれ当該各号に掲げる規定は、適用しない。

2.第1項第2号、第5項及び前項(・・) 隣地境界線からの水平距離が、第1項第2号イ又はニに定める数値が1.25とされている建築物にあつては16メートル、第1項第2号イからニまでに定める数値が2.5とされている建築物にあつては12.4メートルだけ外側の線上の政令で定める位置
 

(法第56条第7項第2号の政令で定める位置)

第135条の10 法第56条第7項第2号の政令で定める位置は、当該建築物の敷地の地盤面の高さにある次に掲げる位置とする。

1.法第56条第7項第2号に規定する外側の線(以下この条において「基準線」という。)の当該建築物の敷地(隣地高さ制限が適用される地域、地区又は区域内の部分に限る。)に面する部分の両端上の位置

 

まず、算定基準線の設定法として今回の事例商業地域2.5勾配の場合「隣地境界線から水平距離12.4m外側」に設定されなければならない。

 これも本事例で解説してみたい。「敷地区分方式」では

 

まず円弧で囲われた基準線は「隣地境界線から水平距離12.4m外側」に設定されていない。

 さらにA,Bの基準線は当該敷地内にあり、特にBにおいては、当該建物の下部に魚眼レンズ(算定位置)を設定される。

 隣地の通風採光を検証するという事に対してきわめて不合理な位置に基準線が設定される。

 この事は敷地区分方式が入隅部のない

 

 この挿絵を参考に適用した事に起因する。その為、今回の凹敷地はもとより屈曲隣地に適用するには困難がある。

 

 結果、この様な事例に敷地区分方式を適用するには法的根拠に欠ける事になる。

 

 「一の隣地方式」の算定基準線を検証してみると

 

すべての算定位置が隣地境界線から外側の12.4mの位置にあり適法となる。このように凹型隣地境界線の場合、一般的に円弧状になるがこの事に関してもJCBA市街地部会の報告書で解説されている。

赤枠で示したが、円弧部も基準線と考えるべきであると結論づける。

この事は法文の書きぶりが日影規制ラインの法文第56条の2と同じ事からもわかる。

日影による中高層の建築物の高さの制限)
第五六条の二 別表第四(い)欄の各項に掲げる地域又は区域の全部又は一部で地方公共団体の条例で指定する区域(*)内にある同表(ろ)欄の当該各項(*)に掲げる建築物は、冬至日の真太陽時による午前八時から午後四時まで(*)の間において、それぞれ、同表(は)欄の各項(*)に掲げる平均地盤面からの高さ(*)の水平面(*)に、敷地境界線からの水平距離が五メートルを超える範囲において

 

「敷地境界線からの水平距離が五メートルを超える・・」の部分は

天空率基準線の記述

隣地境界線から水平距離12.4m外側」と同じ書きぶりだ。

 

 たとえばこの事例で日影規制ラインを作図すると

 

同様にみなし敷地からの水平距離がそれぞれ5m、10mを超える。

 

したがって水平距離の記述から円弧状になるのはきわめて適法といえる。

市街地部会の報告書でも入隅部の基準線が円弧状になる事を解説している。

 

日影規制では従来から隣地境界線から円弧状に作図されており基準線が円弧になる事に問題はない。

 

 

 さらに「一隣地方式」の基準線の位置が凹部から遠くに設置されるのが危険側ではとの指摘に対する検証を行ってみたい。

 

 

中央部の赤枠部が本来の正しい「一の隣地方式」の算定位置。右側が敷地から平行に12.4mの位置。左側は本来の位置よりさらに遠い位置に配置した場合の天空率の計画建築物天空率から高さ制限適合建築物の天空率を引いた差分のみを表示した。

 当然の結果だが右端の隣地境界線に接近した算定位置の差分がP14(14.052%)で最大、本来のP9(10.87%),さらに遠い位置P5(7.794)と隣地境界線から離れるほどに差分が狭くなる。その意味で本来の位置は安全側でありかつ適法といえる。

 

 

隣地境界線から適法距離以上に接近した高さ制限適合建築物は接近した分より大きく投影されている事がわかる。その分天空率は低下する事となり危険側である事がわかる。

 

 

 長くなったが、最近「一の隣地」を採用する事例が多くなるとともに基準線の設定に関する質問も多い。参考にしていただければ幸いだ。

 

 さて本日も長くなったおしまいにしよう。

寒い日が続きます。風邪などひきませぬよう元気でお過ごしください・・!hi

 

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